2000年代に入ってからの第3次AIブームにおいては、深層学習と呼ばれる人間の神経構造ニューラルネットワークを模した多層構造型モデルを有するAlphaGo(アルファ碁)が2015年にプロ棋士を破ったのが象徴的な出来事ではないでしょうか。
それまでは人工知能に関心がなかった方々を含め世間的に脚光を浴び、マスコミでも人工知能を取り上げる頻度が格段に上がったと思います。なにしろ、碁は10の171乗もの番手があると言われ、その勝敗に与える要因の複雑性ゆえに、人間を超えるAIを作るのは難儀だろうと考えられていた時期です。碁ではありませんが、将棋のプロ棋士の方もAIがプロ棋士を超える可能性について、詰将棋のような終盤戦であればAI開発は進んでいるものの、初盤から中盤にかけての部分は、その先の勝敗に与える要素が多種多様で単純なものでないがゆえに簡単には開発が進まないのではないかとコメントされていました。
一手一手に対して何が正解か(碁や将棋の場合、勝つこと)を覚えさせる学習プロセスが容易には設計・設定できないのではないかと考えられていたかと思われます。現在でも、「
アノテーション」と呼ばれるAIに与える教師データ(データとそのデータの意味を付与した情報)を揃えることが、AI導入における一つのハードルとなっている場合も多いかと思います。
このAIに何を学習させるかで、AIの特性・特徴が変わってしまう場面が出てくる映画として「チャッピー」が2015年に上映されました。AI開発者がギャング、といってもヤサグレという感じ、に拉致され、AI搭載ロボットを製作します。出来たて?のAI搭載人型ロボットは、最初は銃の発砲音などにもビックリしていたのですが、じきに悪事を働くことを覚えさせられ、ギャングの一員として行動するというものです。物語がどのように展開していくかは、映画をご鑑賞ください。
いろんな意味で印象に残った映画をもう一作。2019年上映「チャイルド・プレイ」です。タイトルだけ見ると家族をテーマにした映画と思われるかも知れませんが、知る人ぞ知る80年代ホラー映画のリブート作品です。80年代オリジナル版は、人形に凶悪殺人犯の魂が乗り移り、ホラーなことをしでかすというものです。2019年版は、やはり人形がホラーなことをするのですが、魂が乗り移るというような非科学的な引き金ではありません。主人公?の人形、時代を反映してAI搭載です。この人形をプレゼントされた子供が友人たちとホラー映画を見ながら、ホラーな場面で盛り上がっている様子を認識した人形が、ホラーな行為は人間が喜ぶことだと学習して・・・、というストーリー展開です。
フィクション映画ではあるものの、AIの特徴を忠実に取り入れた作品が登場しているという点に、脚本家はじめ制作に関わる方々の進取の精神とリアリティに対するこだわりを感じる次第です。
前回、「ロボット工学3原則」と映画テーマの関係について記述しましたが、2018年に日本政府が「人工知能7原則」を提唱していますのでご紹介します。
・AIは人間の基本的人権を侵さない
・誰もがAIを利用できるよう教育を充実
・個人情報を慎重管理
・AIセキュリティの確保
・公正な競争環境の維持
・AIを利用した企業に決定過程の説明責任
・国境を越えてのデータを利用できる環境を整備
<続く>
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